たねと私の旅

カナダ発、10年の記録。私たちが選べば、世界は変えられる。
母の料理は、たねから始まった…
Tampopo films

監督:オーブ・ジルー

配給・宣伝:たんぽぽフィルムズ
日本語字幕:藤本エリ
字幕協力:堀 純司・国際有機農業映画祭
協賛:たねと食とひと@フォーラム
生活クラブ生活協同組合
パルシステム生活協同組合連合会
原題:MODIFIED
2017年/カナダ・米国・フランス
英語・仏語/87分/カラー

STORY

私達はいつの間にか、「遺伝子組み換え食品」を食べている

小さい頃から食いしん坊だったオーブは、母が作る愛情たっぷりの料理で育った。母は環境活動家でもあったが、もっとも力を注いだのは家庭菜園。娘たちに“食べ物の背景”を伝えたかったのだ。

畑から収穫される豊かな御法が、台所でとびきりおいしい一皿になる至福のひととき。オーブは幼い頃から、畑と台所が大好きだった。

大学に入ったオーブは、都市で一人暮らしを始める。大学では映像を勉強し、実家に戻っては、母が世話する美しい菜園のすがたを映像に収めた

都会での生活は、母の菜園が食品店代わりだったそれまでの生活とはガラッと変わった。オーブにとっては、“スーパーで食品を買う”という新しい体験でもあったが、一方で、「何を食べているのかわからない」という不安が常につきまとうのだった。

奇しくもその年、最初の「GM(遺伝子組み換え)食品」が市場に出回る。多くの国が食品にGMの表示義務を設けたのに対し、カナダとアメリカは表示義務を設けなかった。除草剤を使っても枯れない大豆やナタネ、殺虫能力をもつトウモロコシ、種の壁を越える遺伝子組み換え……。

母からは、GMについて書かれた本が度々送られてくるようになり、読み進めるうちに、企業が開発するGMのたねが急速に広がり、特許によって、農家が“たねを採る自由”を奪われていることを知る。実際に、実家に戻るたびに、周辺ではGMの大豆やトウモロコシが増える一方だった。

何が起きているのかを知るべく、オーブはカメラを携えて外の世界へと向かっていった。

遺伝子組み換え作物をもっとも輸入しているのは日本

日本では、世界最大の遺伝子組み換え(GM)作物輸入国、現在、日本でGMであるか否かの表示義務がある食品は、大豆、トウモロコシ、バレイショ、菜種をはじめとする8種類の農産物と、これらを原料とする加工品。ただし、重量の5%未満のGMの混入は許されている。また、組み替えられたDNAとこれによって生じたたんぱく質が、加工後に検出できない加工食品(植物油、しょうゆなど)および遺伝子組み換えの飼料で育てられた食肉、乳製品の表示は任意。そのため日本では、表示のない遺伝子組み換え食品が、多く流通している。

私達は毎日たねを食べている

普段の生活で、「たね」を意識することはほとんどないが、実は、私たちが食べているものは、たねそのものであることが多い。お米は稲のたねだ。パンもラーメンもパスタも、小麦のたねからできている。大豆もたねそのもので、豆腐、納豆、味噌、醤油の原料。ビールの原料やおつまみの枝豆、コーヒー豆も、すべてたね。乳牛や、食肉用の家畜はトウモロコシ、大豆、綿実など、やはりたねを食べて育つ。たねは、私たちが生きていくうえでとても大切なものなのだ。

PROFILE

オーブ・ジルー

 カナダ・モントリオール生まれ。家庭菜園の野菜で家族の食事を作る母親の影響を受け、幼い頃から食べものや料理に関心をもつ。その後、彼女の興味は料理や菜園に留まらず、食料政策へと広がっていく。
 マリアノポリス短期大学で音楽、NASCAD大学(ノバスコシア州にあるアートとデザインに特化した公立大学)でメディア・アーツを学んだのち、ヨーロッパへ渡る。2年の滞在を経て帰国。
 ヨーロッパの滞在期間中、EUにある遺伝子組み換えの表示義務がカナダやアメリカにないことに強い疑問を抱いたことが、『たねと私の旅』を撮り始めるきっかけとなった。
 撮影期間中には、ヨーク大学で映画制作の修士を取得。また2011年には料理ブログ『ビネット・キッチン』を開設。“菜園からテーブルへ”をコンセプトにレシピをその料理のエピソードとともに紹介した映像は『たねと私の旅』の作中でも度々登場している。
 2017年、約10年の歳月をかけた『たねと私の旅』が完成。初めての長編ドキュメンタリーにもかかわらず、50以上の国際映画祭に正式招待され、多くの賞を受賞した。

受賞歴:
FRAPNA環境映画祭 2018年環境部門 最優秀賞
ロードアイランド国際映画祭 2018年 優秀賞
バーモント国際映画祭 2018年 観客賞
チャグリン ドキュメンタリー映画祭 2018年 最優秀環境映画賞
ルーネンバーグ ドキュメンタリー映画祭 2017年 観客賞
エッカーンフェルデ国際環境映画祭 新人賞
リール東テキサス映画祭 2018年 最優秀学生作品
フランコフォニー国際映画祭 2017年 観客賞
フォール=クロンジュ女性映画祭 2018年 観客賞
ボズカーダ国際環境映画祭 2018年 国際部門ファイナリスト

COMMENTS

たねを巡るこの物語は、観る者の心に“エシカルのたね”を蒔いてくれる。見終わった後、自分が口にする食べ物の背景を知りたくなるからだ。明日から家庭菜園を始めたくなるし、誰かのために美味しい料理も作りたくなる。母と娘が作る料理が実に美味しそうに思えたのは、ほとんどの材料がどこで、誰によって、どうやって作られたのか分かるものだったからではないか。この作品は、私たちが日々の暮らしの中で何を選択するかで、より良い未来を作っていけることを教えてくれる。エシカルとは何かを考えさせられる傑出した一本。

一般社団法人エシカル協会
代表理事 末吉里花

食を大切にする人や家族は本当に幸せそうだ。食を大切にするということは、食べ物を出来るだけ自分の手で育てたり、調達したりするということ。それが出来ないときには、食べ物がどこで、誰の手で、どうやって育てられたり、作られたりしているのか、知ろうとすること。そうすれば、人の幸せにとって真に大切なことが見えてくる。この切なくも心温まる、力強くも美しい映画を観て、そんなことを感じました。他人の幸せを奪ってまで自らの富を増やしても良いと思っている人は多くないはずです。そうであれば、種を集める自由、農作物を育てる自由、食べものを選ぶ自由を奪う権利は誰にもないはずです。昨年、日本では、私たちが誇るべき多様な食文化を下支えしてきた種子法が廃止されました。種を奪われることが野菜を育てる人々の幸せに、その野菜を食べる人々の幸せに、どう影響するのか。まずは知ること。知って心配なことがあれば自分なりに行動を起こすこと。今、10を超える都道府県で種を守るために条例の制定準備が進んでいると聞きます。みんなが少しずつ行動を起こせば、少数の権力者ではなく、より多くの人々が幸せだと感じる社会の実現に近づくかもしれない。そんな勇気さえ与えてくれる物語に引き込まれ続けました。

パタゴニア日本支社長 辻井隆行

カナダの話を、瀬戸内の島で観た。
「ほー、こんな料理を食べてるんだ」「この料理はおいしいのかな?」
カラフルな野菜、料理のしぐさ、鳥のさえずり。
なにせ、お母さんと娘さんの物語なのだ。
「私たちが食べる一口は、どんな世界にしたいか、どんな農業を支持するかの選択よ」
“We’re making up a choice about the kind of world we want to live in”
“and the kind of agriculture we want to support.” とお母さんが言っていた。おおーと思った。
こういう心を僕はパンクの音楽で学んだ。優しく響く、あれと同じだ。

農家兼僧侶 ex.銀杏BOYZ
中村明珍 (チン中村)

私たちは毎日何を食べているのか、それはどうやって育てられ、どこから来た作物なのか。
この映画は素朴で個人的な疑問から始まり、はるかな旅をしながら料理を一皿一皿心込めて作るように、答えを見出してゆく。
観終わった後に本来の自然で豊かな食べ物の味わいが心に残る、そのなんとあたたかく、美味しいこと!

映像作家 鎌仲ひとみ

日本は世界でもトップクラスの遺伝子組換え食品輸入国です。食べていないと思っているかもしれませんが、その輸入量は、国内で生産されるお米の二倍以上。
「遺伝子組換えでない」という食品を選んでいても、日本では、知らずのうちに食べさせられています。
日本では幾ばくかの表示義務はありますが、アメリカやカナダでは、ほとんどの食品に表示義務がありません。
そんな現状に疑問を持つカナダの女性が、自家採種を繰り返す農業の傍、娘と共に遺伝子組換え食品について調べ始め、その姿を長年に渡って撮影したのが、このドキュメンタリーです。
「種は誰のものか?」僕は、この疑問を追い求め、6年前から遺伝子組換え食品の問題点を訴える活動を行って来ました。
この映画は、その疑問に迫り、生きるとはどういうことか、食べるとはどういうことか、そして自らの健康を守るためには何をすれば良いのかを、この闘う母娘の姿を通して、ヒントを与えてくれます。
遺伝子組換え食品に疑問を持つ日本の人たちだけでなく、遺伝子組換え食品の事をあまりよく知らない人たちにも観ていただきたい、心打たれる映画です。

無肥料栽培家・環境活動家
たねのがっこう 主宰
岡本 よりたか

人はどこまで頭でっかちになるのだろう。そして、情緒や倫理観を忘れていくのだろう。「お金」という人類の共同幻想に操られる世界を見せられて絶望的になる内容なのに、不思議とあとに残るのは温かな感動の余韻。それはたぶん、この映画を作った母娘の自然への敬愛が、穏やかなベールとなってこの映画にフィルターをかけているからだと思う。どんなに科学が進歩しても、しょせんは植物に従属して生きている私たち人間が、あろうことか植物の遺伝子組み換えという、とんでもないことを始めてしまったことへの警告。しかしその警告方法は、美しい植物や野菜料理の映像と相まって穏やかに感じられる。いや穏やかだからこそ、深く訴えかけるのかもしれない。ぜひとも多くの方にこの映画を観ていただき、私たちの食の未来についてじっくりと考え始める機会にしていただきたいと思います。

植物療法士 池田 明子

エコロジーオンラインというNPO法人に関わって19年が経った。地球に起きていることをなるべくやさしく伝えたいと思ったのが設立のきっかけだった。だが、これが案外難しい。いつの間にかみんな専門家になっちゃう。遺伝子組み換えの映画なんか化学式のオンパレード(>_<)。でも、この映画には化学式は出てこない。代わりに出てくるのは美味しそうな料理の数々だ。なんかやんなきゃダメだぞ~。そう、お腹が語る映画でした。

NPO法人エコロジーオンライン
理事長 上岡 裕

オーブとジャリは、私と私の母だ。母は日々の食卓を通して、生きること、食べること、未来へ命をつなぐことを伝えてくれた。その「たね」が「私」にまかれて私は育った。そして私は今、私の娘たちに「たね」をまいている。地元の農家を訪ね、直接野菜を買い、彼らの仕事を発信する。毎日の食事は民主主義教育だ。自由と選択を日々繰り返す、食というクリエイティビティを満喫する楽しみを、娘たちと味わいたい。

ローカルメディア「森ノオト」
編集長 北原 まどか

食物を選び、食べる。それだけのシンプルなことが、現代では秘密や虚偽によって複雑になりつつあることをあらためて知らされた作品でした。主人公オーブが遺伝子組み換えに感じた疑問や不安を、ただ素直に追求していく姿が勇ましくもあり爽やかでした。重くなりがちなテーマにもかかわらず、美しい素材やおいしそうに調理されたプレートが見ている人の心を和ませてくれます。食品についての情報は溢れているようで、実は本当に欲しい、知るべきことには手が届かないことが多いもの。これからもこの映画のように、身近なことに目を向けた作品を積極的に観ていきたいと思います。

オーガニックコンシェルジュ
岡村 貴子

ひとが生きるという旅路において、どれだけ豊かな部分を、種を蒔き、食物を収穫し、料理をして食べるということに寄っているのか、そして、その想い出がいかに他の人との関係性において大切なのかということをしみじみと感じさせてくれる素敵な映画でした。
環境活動というと難しい印象があったり、頭ごなしに非難されたような経験があったりして、毛嫌いする人もいるかもしれません。
この映画では、監督自身が自分が大切にしたいことをただ大切にするというシンプルなかたちで身の丈にあった表現をして、淡々と生活する姿が、ぼくには美しくみえました。

リストラティヴ・サークルズ ジャパン
代表 長田 誠司

TRAILER

tampopo films